【平成30年度税制改正より】
Ⅰ.法人税関係
1.所得拡大促進税制の改組→納税者有利となる場合が多い
【要件】
①賃金:継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≧3% ←基準年度との比較なくなった!
②投資:国内設備投資額≧当期の減価償却費の総額の9割
③教育訓練:当期の教育訓練費≧前期・前々期の教育訓練費の平均1.2倍
【措置】
(①及び②を満たした場合)
給与等支給総額の対前年度増加額×15%の税額控除(法人税額の20%を限度)
(①、②及び③を満たした場合)
給与等支給総額の対前年度増加額×20%の税額控除(法人税額の20%を限度)
適用:平成30年4月1日から33年3月31日までの間に開始する事業年度(設立事業年度を除く)
2.中小企業者等における所得拡大促進税制の改組→納税者有利となる場合が多い
【要件】
①賃金引き上げ率前年度1.5%以上
②賃金引き上げ率前年度2.5%以上かつ教育訓練費前期の1.1倍以上又はその事業年度終了の日までに経営力向上計画の認定を受けたもので、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと
【措置】
①の場合 賃上げ額の15%の税額控除(法人税額の20%を限度)
②の場合 賃上げ額の25%の税額控除(法人税額の20%を限度)
適用:平成30年4月1日から33年3月31日までの間に開始する事業年度(設立事業年度を除く)
※以上のように制度の「改組」という名のごとく、改正前のと大きくやり方が変わります。また、改正前は人件費だけの項目だったのが設備投資、教育訓練費の要素が入ってきます。中小企業者等の場合の経営力強化の「証明」が具体的にどのようなものか未だ情報が入ってきていません、、追って記事にしますが、非常に複雑な(事務上も煩雑で漏れやすい?)改正となりました。
Ⅱ.所得税関係
1.給与所得控除の改正→納税者不利
給与等の収入金額 給与所得控除額
162.5 万円以下 55 万円
162.5 万円超180 万円以下 その収入金額×40%-10 万円
180 万円超360 万円以下 その収入金額×30%+8万円
360 万円超660 万円以下 その収入金額×20%+44 万円
660 万円超850 万円以下 その収入金額×10%+110 万円
850 万円超 195 万円
2.公的年金等控除の改正→納税者不利
イ 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000 万円以
下である場合 次の(イ)の定額控除の額及び次の(ロ)の定率控除の額
の合計額(その合計額が次の(ハ)の最低保障額に満たない場合には、次
の(ハ)の最低保障額)
(イ)定額控除 40 万円
(ロ)定率控除
(50 万円控除後の公的年金等の収入金額)
360 万円以下の部分 25%
360 万円を超え720 万円以下の部分 15%
720 万円を超え950 万円以下の部分 5%
(ハ)最低保障額
65 歳未満 60 万円
65 歳以上 110 万円
ロ 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000 万円を
超え2,000 万円以下である場合 次の(イ)の定額控除の額及び次の(ロ)
の定率控除の額の合計額(その合計額が次の(ハ)の最低保障額に満たな
い場合には、次の(ハ)の最低保障額)
(イ)定額控除 30 万円
(ロ)定率控除
(50 万円控除後の公的年金等の収入金額)
360 万円以下の部分 25%
360 万円を超え720 万円以下の部分 15%
720 万円を超え950 万円以下の部分 5%
(ハ)最低保障額
65 歳未満 50 万円
65 歳以上 100 万円
ハ 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が2,000 万円を
超える場合 次の(イ)の定額控除の額及び次の(ロ)の定率控除の額の
合計額(その合計額が次の(ハ)の最低保障額に満たない場合には、次の
(ハ)の最低保障額)
(イ)定額控除 20 万円
(ロ)定率控除
(50 万円控除後の公的年金等の収入金額)
360 万円以下の部分 25%
360 万円を超え720 万円以下の部分 15%
720 万円を超え950 万円以下の部分 5%
(ハ)最低保障額
65 歳未満 40 万円
65 歳以上 90 万円
3.基礎控除控除の改正→納税者有利
イ 合計所得金額が2,400 万円以下である個人 48 万円
ロ 合計所得金額が2,400 万円を超え2,450 万円以下である個人 32 万円
ハ 合計所得金額が2,450 万円を超え2,500 万円以下である個人 16 万円
合計所得2,500万円超は基礎控除なし。
4.青色申告特別控除の改正→納税者不利
正規の簿記の原則に従って記録している者の控除を55万円に(改正前65万円)
ただし、次に掲げるいずれかに該当する場合は65万円。
①国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定める「電磁的記録の備付け等」を行っていること
②その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を電子申告(e-Tax)でしていること
適用:平32年以後の所得税から
Ⅲ.資産税関係
1.一般社団法人等に対する相続税・贈与税の見直し
一般社団法人等の理事である者(当該一般社団法人等の理事でなくなった日から5年を経過していない者を含む)が死亡した場合において、その一般社団法人等が次の要件のいずれかをみたすものであるときは、その一般社団法人等がその死亡した者(被相続人)の相続開始時におけるその一般社団法人等の純財産額をその時における同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額に相当する金額をその一般社団法人等がその被相続人から遺贈により取得したものとみなして、その一般社団法人等に相続税を課する。
①相続開始の直前における当該被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が2分の1を超えること。
②相続開始前5年以内において、当該被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
適用:平成30年4月1日から(ただし、平成30年4月1日前に設立された一般社団法人等の場合は平成33年4月1日以後死亡から適用)
2.小規模宅地等の特例の見直し
①居住用宅地等(家なき子のケース)
・自己、自己の配偶者に加え、3親等内の親族、関係する同族会社、一般社団法人等の所有する家屋に居住している者を除外することに見直し。
・相続開始時に居住していた家屋を以前に(相続前に)所有していた者を除外することに見直し。
②貸付事業用宅地等の見直し
・相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで3年以上事業的規模で貸付事業を行っていた者の当該貸付事業の用に供されたものを除く。)を除外することに見直し。
適用:平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した宅地等から
3.地積規模の大きな宅地の評価(平成29年度改正、30年1月1日より適用)
相続税実務において、その適用の可否について不透明な部分が多く、またその適用によって評価額が大きく変わることから、リスクの高い項目となっていた広大地の評価について新通達20-2を定められ、地積規模のの大きな宅地として適用要件が明確となったものです。
(主な要件)
・地積判定500㎡(三大都市圏以外は1000㎡)以上
・普通商業併用住宅地区又は普通住宅地区に所在すること
・市街地調整区域(開発行為が出来る一定のものを除く)ではないこと
・工業専用地域ではないこと
・指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域でないこと
なお、新通達20-2は財産評価基本通達15(奥行価格補正)から同20(不整形地の評価)20-3(無道路地の評価)、24-6(セットバック)、40(宅地造成費の控除)等、旧広大地の評価では併用できなかった他の通達による評価方法が併用出来るようになりました。
(財務省平成30年税制改正大綱、国税庁税制改正資料より)